国指定の特別天然記念物であり、絶滅危惧種のニホンライチョウ。古くから日本人に愛されてきた美しい鳥のために、私たちが知るべきこと、できることとは? 最前線でライチョウ保全に取り組む専門家たちが、「神の鳥」を未来に残す方策と課題を考えます。
一般のバーダーや野鳥フォトグラファーにもお読みいただきたい1冊です。
国指定の特別天然記念物であり、絶滅危惧種のニホンライチョウ。古くから日本人に愛されてきた美しい鳥のために、私たちが知るべきこと、できることとは? 最前線でライチョウ保全に取り組む専門家たちが、「神の鳥」を未来に残す方策と課題を考えます。
一般のバーダーや野鳥フォトグラファーにもお読みいただきたい1冊です。
ライチョウ本の決定版です!
ライチョウの生態と魅力、日本人とのかかわりの歴史、現状と課題、そして未来について、ライチョウを取り巻く状況を網羅的に知ることができる、ライチョウ本の決定版です。
各分野の70名を超える専門家が執筆にあたり、わが国で取り組まれている、あるいは挑まれてきた、この鳥についての研究や保全の全体を俯瞰できる内容となっています。
ライチョウの研究や保全活動に携わる方はもちろん、登山者や野鳥愛好家など、ライチョウに興味があるすべての方におすすめしたい一冊です。
<本書の特徴>
70名を超える各界の専門家による執筆。ライチョウを取り巻く状況と、保全に向けた研究や取り組みの全体を俯瞰できる内容です。
世界と日本のライチョウの分類・分布と生息環境、体の特徴、1年の生活、名前の由来などを紹介されています。
江戸時代から続く日本人とライチョウとの関わりや山岳信仰との関係、ライチョウにかかわる法律などをまとめ、ライチョウの捕獲と保護の歴史について考察されています。
ライチョウの保全にかかわる話題として、各生息地における個体数の変化や野生動物の侵入といった課題、生息域内での保全にむけた取り組みや計画、動物園を中心とした生息域外保全における研究や将来展望を示されています。
ライチョウを実際に見ることができる動物園・博物館を掲載。また、野生のライチョウを観察するためのポイントや注意点なども紹介されています。
本書の売上の一部は動物園生物学研究センターを通じ、ニホンライチョウの保全にかかわる研究や活動に活用されます。
<目次>
第1章 ライチョウの分類と生態
1 世界のライチョウ類と日本のライチョウ
1 世界のライチョウ類と日本のライチョウ:分類・分布と生息環境
2 遺伝子解析により解明されたライチョウの系統分化
2 ライチョウの体
1 体の特徴・飛翔・消化管
3 ニホンライチョウの1年の生活
1 ニホンライチョウの生活場所
2 ニホンライチョウの餌の季節変化
3 ニホンライチョウの換羽
4 ニホンライチョウの生活史
5 ニホンライチョウの天敵
+ Plus 日本の高山植物の起源と特徴
+ Plus ライチョウ生息地の植物
+ Plus 高山帯の鳥類
4 ライチョウという名前
1 ライチョウの名前の由来
2 ターミガンとグラウスとサンダーバード
+ Plus 日本にいるもう1つのライチョウ「エゾライチョウ」の生物学
第2章 ライチョウの捕獲と保護の歴史
1 日本人とライチョウの関わりの歴史
1 江戸時代のライチョウへの関心の高まり
2 江戸時代のライチョウの捕獲と献上
3 江戸時代に描かれたライチョウの絵画
4 江戸時代の加賀藩による保護
5 明治時代に神官が守った白山のライチョウ
6 人を恐れない日本のライチョウと山岳信仰
2 生息環境の保全
1 生息環境の細菌汚染と対策
2 乗鞍スカイラインの歴史とマイカー規制の現状
+ Plus 自然環境保全と地域振興の両立:乗鞍岳における社会実験「乗鞍だけガチャ」
3 法律で守られるライチョウ
1 文化財保護法
2 鳥獣保護管理法
3 自然公園法
4 レッドリスト、種の保存法、保護増殖事業
+ Plus 生物多様性国家戦略とは
+ Plus 明治・大正期の狩猟制度とライチョウ
4 絶滅地域でのライチョウ再発見と放鳥の試み
1 白山で発見されたライチョウ
2 中央アルプス駒ヶ岳で発見されたライチョウ
3 富士山と金峰山へのライチョウの移植実験
第3章 野生ライチョウの現状と課題
1 ニホンライチョウの生息数とその減少
1 なわばり調査によるライチョウの生息数と繁殖数の推定
2 火打山のライチョウ
3 北アルプス・立山のライチョウ
4 北アルプス・白馬乗鞍岳における冬季の生態
5 北アルプス・笠ヶ岳のライチョウ
6 北アルプス・乗鞍岳のライチョウ
7 北アルプス・御嶽山のライチョウ
8 南アルプスのライチョウ
2 地球温暖化によるライチョウへの影響
1 気候変動による火打山での植生変化
2 30 年前のなわばり分布から推定された温暖化の影響
3 高山生態系のシンボル・ライチョウへの温暖化影響予測
3 高山に侵入した野生動物
1 センサーカメラによる北アルプス高山帯における哺乳類のモニタリング
2 里の動物の高山への侵入による高山環境の破壊
3 高山帯に侵入した捕食者
+ Plus 岐阜県のニホンジカとイノシシの分布拡大と植生破壊
+ Plus 乗鞍岳で発生したツキノワグマによる人身事故
第4章 ライチョウの生息域内保全
1 ライチョウをはじめとする希少種保全・環境保全の考え方
1 ライチョウをはじめとする希少種の保全について
2 火打山におけるイネ科等植物の試験的除去
3 捕食者対策
2 ケージ保護
1 雛を人の手で悪天候と捕食者から守る
2 実証されたケージ保護の有効性
3 若鳥の分散と定着
3 卵の移植
1 中央アルプスにて無精卵を有精卵に取り替える卵の移植
4 地域の取り組みと市民の参加
1 富山雷鳥研究会:立山での40 年の活動
2 静岡ライチョウ研究会:ライチョウ分布南限地域の標識調査
3 長野県ライチョウ保護回復事業計画とライチョウサポーターズ
4 南アルプスライチョウサポーターの取り組み
5 とやまのライチョウサポート隊とライチョウ見守りネット
6 新潟県妙高市の取り組み:火打山のライチョウ保護活動
7 岐阜県乗鞍環境パトロール員の取り組み
8 岐阜県ライチョウ保護計画について
5 野生復帰にむけて
1 ライチョウの野生復帰にむけて
2 エゾライチョウの飼育から見えてきたライチョウ類の野生復帰の課題
+ Plus 北海道におけるエゾライチョウの飼育の歴史と保全対策
第5章 動物園でのライチョウの生息域外保全
1 生息域外保全とは
1 環境省の生息域外保全に関する基本方針
2 動物園が生息域外保全に果たす役割について
+ Plus JAZAと環境省の「生物多様性保全の推進に関する基本協定」
2 ニホンライチョウの飼育の歴史
1 市立大町山岳博物館と富山県の取り組みを中心に振り返る
3 スバールバルライチョウを用いた飼育試験
1 ニホンライチョウの生息域外保全にむけたスバールバルライチョウの導入
2 スバールバルライチョウを用いた飼育・繁殖技術の確立
+ Plus スバールバルライチョウを用いた季節逆転個体の人工授精と飼育展示
4 ニホンライチョウの飼育の再開
1 生息域外保全の実施体制
2 動物園へのニホンライチョウ卵の移送と飼育開始、人工孵卵・育雛
3 野生由来のニホンライチョウ卵の孵化雛の死因究明
4 動物園によるニホンライチョウの飼育下繁殖のスタート
5 市立大町山岳博物館におけるニホンライチョウの餌と特別メニューの開発
6 栄養学的調査と人工飼料の開発
5 ライチョウの生理生態
1 ニホンライチョウとスバールバルライチョウの生理生態の比較
2 日長・気温とライチョウの繁殖活動
+ Plus ライチョウの眼窩上肉冠と繁殖活動
6 ライチョウの獣医学的管理
1 ライチョウをはじめとする動物園鳥類の獣医学的管理
2 ライチョウのロイコチトゾーン原虫感染
3 ライチョウのコクシジウムと寄生原虫の新種発見
4 ライチョウの衛生管理と健康管理
5 ニホンライチョウの救護事例
+ Plus エゾライチョウの線虫感染
7 野生復帰にむけた野生型の体作り
1 腸内細菌叢の役割
2 野生型腸内環境を誘導するライチョウ用飼料の開発
8 普及啓発・環境教育
1 ライチョウ会議の設立と歴史
2 動物園におけるニホンライチョウの展示公開
3 ニホンライチョウの一般公開の普及啓発効果を測定する
+ Plus クラウドファンディング“残そうニホンライチョウ! 絶滅の危機にあるライチョウを救いたい”
第6章 ライチョウに会いに行く
1 日本と世界の動物園のライチョウ
1 ライチョウ類の飼育・展示の古今東西
2 動物園のライチョウ
1 秋田市大森山動物園(スバールバルライチョウ)
2 那須どうぶつ王国(ニホンライチョウ、スバールバルライチョウ)
3 東京都恩賜上野動物園(ニホンライチョウ、スバールバルライチョウ)
4 横浜市立金沢動物園(スバールバルライチョウ)
5 富山市ファミリーパーク(ニホンライチョウ、スバールバルライチョウ)
6 いしかわ動物園(ニホンライチョウ、スバールバルライチョウ)
7 長野市茶臼山動物園(スバールバルライチョウ)
8 飯田市立動物園(スバールバルライチョウ)
+ Plus 多摩動物公園の知られざるスバールバルライチョウ
+ Plus 多摩動物公園野生生物保全センターでのライチョウ研究
+ Plus 横浜市繁殖センターでのライチョウの飼育と研究
3 博物館のライチョウ
1 ライチョウ博物館(市立大町山岳博物館付属園)
2 学校理科室のライチョウ標本(岐阜県博物館)
+ Plus 剥製標本からわかった生息地、岩手県早池峰山
4 野生のライチョウに会いに行く
1 立山(富山県)
2 乗鞍岳(岐阜県・長野県)
+ Plus ライチョウ観察ルールハンドブック
<著者プロフィール>
楠田 哲士 (クスダ サトシ)
国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学応用生物科学部准教授(動物繁殖学研究室)、専門は動物園動物繁殖学、動物園学。1978年兵庫県神戸市生まれ。2002年日本大学生物資源科学部動物資源科学科を卒業後、2004年岐阜大学大学院農学研究科生物資源生産学専攻修士課程修了、2007年岐阜大学大学院連合農学研究科生物生産科学専攻博士課程修了、博士(農学)取得。その間に、東京都臨時職員、日本学術振興会特別研究員DC2。2007年日本学術振興会特別研究員PD を経て、2008年に岐阜大学応用生物科学部助教、2013年より現職。公益社団法人日本動物園水族館協会生物多様性委員会外部委員、日本野生動物医学会理事、野生動物保全繁殖研究会理事、動物園水族館繁殖研究アライアンス代表などを務める。全国の動物園や水族館と連携して、主に哺乳類、鳥類、爬虫類を対象に繁殖の生理や行動に関する研究を行っている。現場での飼育・繁殖の最前線に役立つ研究を心がけ、保全への貢献を目指している。
ご質問・ご相談などが
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