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第9羽「モノクロ写真に鮮やかな色彩が蘇るとき」
第6回ジャパンバードフェスティバル、今年はお天気に恵まれた二日間でした。おかげさまで「谷口高司・ベクトル鳥のぬりえ工房」も、お絵描きする方、ぬりえを楽しむ方で大盛況でした。お越し頂いた多くのお客様ありがとうございました。そして、この連載を「毎月、愉しく読んでますよ」とお声をかけてくださったみなさま、ちょっと気恥ずかしく、でもすごく嬉しくありがたかったです♪本物の私はいたって地味なオンナで、がっかりされたことと…失礼いたしました。これからもご贔屓にお願いいたします。
今年のバードフェスティバルも、我孫子市の肝いりなのでともかくスゴイ活気!手賀沼公園広場・アビスタ・手賀沼親水広場・水の館の各会場で、様々な心躍る催しがあったのですが、私達が参加できたのは、塚本洋三さんの講演会「東京湾にガンがいた頃」だけでした。これはご本人から「絶対来てよ!」とお誘いいただいて、とても楽しみにしていたのです。
塚本さんは高司にとって、鳥の世界の兄のよう、敬愛する大切なお方の一人です。嫁の私も右へならえ。しかもとってもお洒落さんなので、それだけでお会いするのが楽しみなのです。
私の周りは、「そんな靴下ってどこに売ってるの!?」と職務質問したくなるような、それはそれは品の無い蛍光オレンジの靴下を愛用していた昔の高司をはじめ、今のカタログ世代の着こなし上手さんたちとは、大きく異なる…っていうか見劣る「洋服なんて着てりゃいいだろ世代」の方たちばかりなので、塚本さんの存在はそれだけでも偉大。
彼がトレンチコートのウエストをきゅっと縛っている立ち姿とか、マオカラーのシャツを素敵に着こなしている姿なんて惚れ惚れするほどです。バリバリの江戸っ子なので語り口も気持ちいいし、男気もあるしで、きよしくんがいなければ追っかけしたかもしれないくらいファンです。
さて、その塚本さんは(財)日本野鳥の会副会長を退いた後に「(有)バード・フォト・アーカイブス」という会社を立ち上げ、モノクロ写真に残された自然、まだ元気だった頃の日本の自然のすばらしさを世に送り出す仕事をはじめました。モノクロ写真のライブラリー展開をする一方で、月刊誌BIRDERで長く「新浜物語・手探りの無常」を連載。この連載で氏の存在を知られた方も多くいらっしゃるでしょう。
新浜と呼ばれるエリアでの、伝説のバードウオッチャーたちの活動や保護への思い、野鳥への熱い心…それらを丁寧に描いた「新浜物語」をさらに加筆修正。文一総合出版より「東京湾にガンがいた頃-鳥・ひと・干潟 どこへ-」の上梓を記念しての講演会が文頭のものだったのです。ここにこぎつけるまでがけっこう難儀だったらしく、電話でお話しするたびに「いやぁ大変!!」とおっしゃっていました。いままで色んなお仕事をされてきても、ご自身の本となると別物なのか、寝不足のかすれた声で「ジンが効かない…」とこぼしておられました。「ジン」で気合を入れるあたりも超おしゃれでしょ?で、そのおくたびれの状況の中で「絶対見に来てよ」と言われていたのが講演会後半の「スライド・ショウ」だったのです。
親水広場の私達のブースから、着物で爆チャリ、袂も裾も風になびかせ我孫子の皆様の目を点にさせて、会場・アビスタホールに到着。まぁるいおなかに、千葉県支部お仕着せの黄色いベスト姿も凛々しい、私がお兄様と慕う志村さんの横に座ったとたん、その「スライド・ショウ」ははじまりました。
ガン・芦原・シギ・チドリ・海…今からは想像もできない豊かな自然あふれる新浜の、過ぎし日をを映すモノクロの写真に、感情を押さえ込んだ短いコピーがつき、淡々と画面が変わっていきます。「♪鳥くん」こと永井真人さんの、普段の彼の作品からは想像もつかない、抑えた感じの音楽もいやがうえにも気分を盛り上がり、涙腺ゆるみっぱなし。
いやぁ~やられました。ガツン!!という感じです。
モノクロ写真に浮かび上がる「鮮やかな色」は私の心の原風景と重なったのか、思い切りのストライクゾーン。涙があふれて止まりませんでした。爆チャリで息も上がっていたので、強制脱酸素洗脳状態だったかもしれませんが、思いっきりすっぽりと、はまってしまったのです。
私だけでなく、ショウが終る頃は何人かの方も涙を拭いておられました。
大好きなディズニーランドのオープンと、私が鳥を熱心に見始めた頃がほとんど重なっているので、こんな素敵な自然があのあたりにあったなんて、ぼんやりとしか分かっていませんでした。
東京ディズニーランドにはおそらく50回近く行っていると思うのですが、高司とは2回しか行ったことがありません。なぜなら必ず「あぁこの辺りは、シギやチドリが一杯居たんだよなぁ」「あぁこんなひどいもの建てちゃって」と思いきりぶちぶち言うからなのです。夢と魔法の国で、ジジィの愚痴話、聴きたい人なんて世界中探したって一人もいないはず!「じゃぁ私にどうしろって言うわけ!?」とディズニーマジックを一瞬で解かれてえらく不機嫌になる私に「そういう話だ!」「辛いんだよ!」とこれまた不機嫌な高司。「意味わかんない!」とキレる私…ということで東京ディズニーランドは家族で行くのはNG、鬼門中の鬼門。
「そういう話だ!」という極めて抽象的な話の答えがこのモノクロ写真たちの中に集約されていました。
豊かな自然をたたえていた東京湾。広がる葦原。広がる干潟。そこに集う鳥・とり・トリ。そして何ともクラシックムード漂うアナログなバードウオッチャーたち。寡黙なモノクロ写真ですが、それだけにすごい説得力で迫ってきます。
高司はここに登場する新浜グループの方達とは面識はあるものの、塚本さんのような濃い交流をもてる時期を逸しての、野鳥デビューだったとのこと。魅力あふれる新浜を堪能する前に、力及ばず、開発の魔手が伸び…変わり果てた姿となり…今でも闘い続けている多くの心ある人たち…それでも止まることのない開発…いろいろ悔しさも募って、高司が不機嫌だったのですね。
でも、やっぱり私にはどうしようもないんだけれど。
訪れる人間にとって夢と魔法の王国でも、ずっとそこにいた生物にとっては、死へ向かうための厳しい試練以外の何物でもなかった事実。それでも、ディズニーランドで一瞬でも味わえる幸せな高揚感いうのは、なんとも魅力的。だから、これら一連のことを知ってもなお行くのかと聞かれれば今後も多分絶対私は行くと思う。
ただ「保護しましょう…」だけだと全く新しい展開は望めない。みんながうまく共生できるような開発というものに行き会えればよいのに…と改めて考え込んでしまうのです。答えの出ない長考…これは高司のいう辛さとも通じるのかな?
塚本さんのその著書を読んでみると、彼の歩んできた道は、市田則孝さん同様、日本の野鳥保護・環境保護活動の足跡そのものということを改めて知ることができます。伝説のバードウォッチャー達との10代での熱く輝く交流が、全ての礎になっていることが良く分かります。
塚本さんのキャリアを持ってしたら、もっとブイブイ言って威張って歩いたって、誰も何にも言わないでしょうに…威張ることのなかった高野伸二さんの人格が、そのまま塚本さんにも受け継がれているのだそうです。「鳥の世界の長嶋茂雄」と断言するほど、高野さんを師と仰ぐ高司にとって、そこもたまらなく心引かれるところでもあるんですって。
額に汗し、寒さと闘い、日差しに晒され水に浸りしながら新浜に通いぬき、自分の人生の行く道を新浜で探り当てて、実現した塚本さん。彼の選んだモノクロ写真ばかりだから、ものすごい迫力で「スライド・ショウ」が迫ってきたのでしょうね。
塚本さんの「スライド・ショウ」に触れてから、私の頭の中は、浮かんだ思い出の光景を、自然と、カラーか?モノクロか?と分けてみるようになりました。記憶に鮮やかに残っている色、記憶とリンクするモノクロ写真。自分の中の色を探す旅をはじめてみると、鮮やかで心弾む記憶ほど頭の中ではカラー化しているようです。
我が家の壁に飾ってある数葉のモノクロ写真は、見るだけでその頃の様子を瞬時に思い出すことができます。小さい頃、ロマンスカーで行った夏の旅行、小田原の駅でぼっと映っている私はエメラルドグリーンの地のクレープに白の水玉のワンピースでしたした。横でさらにぼっとしている弟のチェックのズボンの柄はグレーで、麦藁帽子のリボンは紺色でした。でも写真はモノクロ。
この年、東京の街は東京オリンピック一色。それはそれはすごい盛り上がりでした。街が息をするように大きく動いて感じられたものです。でも私の記憶はまだらで、モノクロとカラーが交差しています。
長く工事をしていた新宿西口エリアもオリンピックにあわせて工事が完了。この景色は京王線・新宿駅の仮駅舎すすけた材木のせいかモノクロです。でも、できたばかりの京王百貨店が、虹の色の一色ずつをとって各階フロアのシンボルカラーにしたのを階段を上から下まで走りまわり、「すごくきれい!」と興奮したことは、鮮やかな驚きをもって色として残っています。
父に連れて行ってもらった東京→小田原間の新幹線試乗会。「ともかく早い、夢の電車だ」と聞いていたのに、思ったより遅く不満だったのか、車窓から見た景色はモノクロ。とても早く走るようには見えないものの、新幹線の白い車体に青い帯の鮮やかさだけがカラー。満洲鉄道→シベリヤ抑留→京王帝都と鉄道マンだった若き日の父も、思っていたより遅かったのか、行きのハツラツぶりと打ってかわって、妙に静かだった印象。このときの父はモノクロです。
オリンピックだって、競技の金・銀・銅メダルをとった国のシールを貼る世界地図つきの台紙は鮮やかな色だけれど、聖火リレーを甲州街道に見に行った時の景色は、私の中でモノクロです。雨が降っていたからか、燃え盛る聖火を期待していったのに、目の前を一瞬で通り過ぎて行ったので、私の目線からはタダの煙か、白っぽい湯気のようにしかみられず、ちょっと凹んだせいでしょうか?
では実際の私がカラー写真に初めて収まったの何時だったでしょう?世田谷区立松沢小学校2年生の時の遠足の時のように覚えています。すこし赤みがかった初めてみる「カラー写真」。すごく高かったけれど母にねだって買ってもらったのでした。一年生初めての遠足は新宿御苑で、母と弟も一緒でとても楽しかったけれど、この写真はモノクロでしたし、やはりカラー写真の衝撃はとても大きいものでした。このはじめてのカラー写真のピンの甘い赤は深く記憶に刻まれています。
私の記憶がいやおう無しにカラー化するのは、カラーテレビが庶民の生活に入り込みはじめ、オリンピック需要で世間が沸いていた、昭和39年あたり、ということですね。
いまの子ども達は産まれた瞬間から、多くの色に囲まれて生きています。テレビもそう、自分達が映っているビデオや写真もそう。携帯の画面まで鮮やかな色…でもモノクロ写真を理解しないのかといえば答えはNOと思います。
長男は、フランス在住だった今は亡き銀城アトムさんという写真家の生前の作品展に行ったときに、「銀板写真」に刻まれた西フランスの景色に見入って動きませんでした。ギャラリー全体に飾られたモノクロ写真の世界。でもそれは決して冷たい世界ではなく、銀城さんのあたたかい視線に捉えられ、生き生きとし、風をも感じられるような空間でした。色のあふれる時代に生まれた長男だからこそ、モノクロの世界に惹かれたのでしょう。
銀城さんの写真集は今でも彼の宝物です。
カラー写真が多弁で薄っぺらな町の衆だとすると、モノクロ写真は無口で無骨な素浪人といった感じでしょうか?見た目で全てがわかった気になってしまうカラー写真と違い、モノクロ写真は「行間を読む」努力を必要とされるように思います。その行間を読む作業こそが、自分を素に立ち戻らせてくれる瞬間なのかもしれません。
フィルターを通してモノを見るのは良くないことのようにも言いますが…逆に、いま実際見えているものをモノクロ画面に置き換えれば、案外大切なことや大事なモノがすっと見えてくるかもしれませんね。
そうそう「東京湾にガンがいた頃」の最後のほうに塚本さんが「洋ちゃん」と可愛がられていた頃の、紅顔の美少年の写真が載っています。くたくたになって、ちょっと小さめのしょっぱいガクラン姿の洋ちゃんは、今と違って天衣無縫な感じとってもキュートな笑顔です。あれから幾星霜、キュートな少年は、素敵なオジサマに。長い長い歴史を感じられるのもモノクロ写真の素晴らしさ。
さ、今年もあと一ヶ月。どんな素敵な色のある風景に出会えるでしょうか。
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読売テレビ関西ローカル「大阪ほんわかテレビ」12月10日
放映のものに高司が紹介されます。乞うご期待!
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♪谷口高司の額装原画イラスト、店頭で販売開始しました。
♪誠文堂新光社からぬりえの本がでました!
「色鉛筆でたのしむ大人のぬりえ 日本の鳥」
12種のぬりえと見本。税込み1000円
もちろんホビーズワールドでも取り扱い中です
http://www2.osamadesk.com/st/us2133/shop_detail.php?id=963
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【野鳥の絵を楽しむ教室:いずれも事前申し込みが必要です】
◆谷口高司&ベクトル鳥のぬりえ体験塾・開催
脳の活性化に良いと分かっていても、ぬりえのぬりかたが分からない方に朗報です!
著者自らの指導、画材もレンタル
車椅子での参加も可能です。
9日(土)10時から12時 アンサンブル荻窪4階第一教室
必ず事前にお申し込みください。参加費は、受講料。
レンタル画材はお持ち帰りいただける「鳥のぬりえ」一冊を含み1800円です
親子参加の場合は受講料のみ500円追加で頂戴します
詳細はこちらへ http://www.fieldart.net/nuriezyuku.html
◆今月の「谷口高司と野鳥を楽しむ会」
描きおろし完全オリジナルテキストを使ってタマゴ式鳥絵塾。
11日(月)9時半 明治神宮で「シメ」を描きます。
JR原宿駅改札口側の鳥居下へ集合 雨天中止
21日(木)18時半 アンサンブル荻窪「アトリ」
必ず事前にお申し込みください。参加費は1000円です。
レンタルで画材もご用意できます(別途300円)
詳細はこちらへ http://www.fieldart.net/drawing.html
◆丸の内さえずり館 MARUNOUCHI鳥絵塾
毎月第一水曜日19時、丸の内でお会いしましょう!
お問い合わせ・申し込みは直接丸の内さえずり館へお願いします。
http://www.m-nature.info/about/index.html
12月=カーディナルとホーリー
1月=メジロと梅
2月=ラブバード(ボタンインコ)
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