第19羽 「またまた図鑑のはなし」

 10月15日私たちは武蔵五日市にある、故高野伸二さんのお墓参りに伺いました。
23年前のこの日に私たちは結婚式をあげ、披露宴が終わる頃に、高野さんが息を引き取られたのです。春にお仲人をお願いし、夏に体調が悪いので…とお断りの電話をいただいていたのですが、まさかこれほど早くお別れの時が来るとは思いませんでした。
高司はいままでも何回もお参りに伺っているのですが、私は数回しか伺えずじまいのままで不義理を心の中でお詫びしておりました。


今秋、高野さんの名著(財)日本野鳥の会編「フィールドガイド日本の野鳥」が増補改訂版というかたちで生まれ変わり、本の完成のご報告も兼ねて、この日のお参りとなったのです。もちろん、会本部のスタッフ、安西英明さん、小林篤六さんともご一緒です。直前まで色校に時間がかかり、この日に出版できるか微妙だったとのことですが、ギリギリお命日に間に合って…と爽やかな笑顔のお二人と、すっかりリニューアルしてキレイになった武蔵五日市駅からタクシーで菩提寺に向かいました。


高野さんの墓碑の前では、写真家の叶内さん、偶然同じ時間にお参りにこられたFさんがおられました。
小林さんのバッグから大事そうに出された「フィールドガイド日本の野鳥」は、青地に代わった斬新なタイトル部分が、日を受けて美しく輝き、みなさんの「ぅおぉ~」という声に迎えられました。
前回に続き、高司が描かせていただいた増補部分も美しく刷り上っていて、ほっとしました。また今回大幅に手直しをした箇所も、筆を加えた本人がわからないほどの仕上がりで、印刷技術以上に、安西さん小林さんの奮闘ぶりに、深々と頭を下げお礼を申上げました。
そして高野さんの墓前にも静かに手を合わせました。

昨年暮れ頃より、安西さんから「高野さんのお命日をめざして増補改訂版を出したい」という打診を内々に頂いたとき、高司は姑の介護の泥沼の中におりました。ケアマネージャーさんに「家庭看護の域を超えている」と言われる前後のことなので、肉体的にも精神的にも疲労はピークだったと思います。そしてそのあとの引越しやら店の閉店やらの騒動の中、リクエストどおりの増補部分38種に、タマゴや足あと、羽等のイラストをお渡ししたのです。
これらの絵がキレイに仕上がって目の前にあるのですから感慨もひとしおでしょう。
前回の増補版の時のイラストを描かせていただいた後に、また幾つか大きなお仕事をさせていただいたので、今回の図版はかなりの出来栄えと思います。あまり誉めると、鼻の穴が開きっぱなしになるのでめったに誉めないようにしているのですが…今回は彼の置かれたその頃の状況の中で、よくもこれだけ描けたものだと、ただただ感心。やはり職人の血がビンビンに流れているのですね。

加えて、今回は、安西さんのご提案から高野夫人の御許可をいただき、従前の高野さんのイラストに直接筆を入れる作業もさせて頂きました。ちょうど転居先が見つかり、契約が終わって私たちのものになったばかりのマンションの一室で、安西さんと小林さんが、高野さんの生の図版を奉げ持っていらして…それが4月の末のことでした。床のフローリングの張替えだけ済んでいて、がらんとしたテーブルもないところで、絵を広げながらの作業です。

高野さんご自身が生前気にしておられた訂正部分や、その後の時間の中で新しく判明したことなどを、どう直していくか?というところで、パソコン修正には限界があるし、一番安全でキレイに仕上がる方法を考え、直接筆を入れることになったのです。が、高司の緊張はかなりのものでした

高野さんは高司にとって神さまのような大事な尊敬できる人です。
お人柄ももちろん、その観察眼は、高野さんがなくなって23年を経ても、凄い!と言います。絵は荒いように見えますが、でも一目でその鳥とわかる特徴やポイントを捉えている、雰囲気が描けているのは、高司は一生かかっても追いつけないと思っているほどです。
その方の記念碑的作品に直接筆を入れてよいのか?という逡巡や葛藤はかなりあったようです。ただ安西さんの「この図鑑を活かすために!」という強い意志がなければ、なかなかできるものではありませんでした。

リストを見ながら訂正箇所をチェックし、最初のアビのページに筆を入れた時は、部屋の空気がピーンと張り詰めていました。が、高野さんのタッチに似せて筆を入れるたびに、それらの鳥と図鑑の力が甦ってくるような、そんな印象を持ちました。
 高司の筆先を見つめる私たち三人は、そのたびごとに「ほ~」とどよめいたほどです。ほんの小さな修正から、全体的に色を重ねるものまで、200ヶ所を越える原画への作業は、結局その日一日ではとうてい終わるものではなく、その後は野鳥の会の本部の机で続けられました。今はパソコンで美しいイラストがどんどんと描ける時代です。でも、生き物を描くにはやはりあたたかい人の手で、筆や絵の具を使って描いたほうが、命が通い合う気がしてならなかったのです。今回このの作業に立ち会って、高野さんが鳥達に注ぎ込んだ思いをイラストから感じ、高司の筆がまたその思いを繋げているとしみじみ感じたものでした。

文章の方も、安西さんが聞きうる限りの多くの関係者の方のお声を集約。出版後25年の間の新たな情報を加え、一から全て見直しをするという、途方もなく膨大な作業にご尽力されました。
25年以上前に高野さんの描かれた絵は貼り付け作業の工程のノリの色が浮き出てコンディションの悪いモノもありましたし、同じ画材で描いているとはいえ、増補部分とのバランスをとっての色校も大変だったと思います。本はページごとにするのではなく、8の倍数で面付けをして刷るので、同じ面つけのものは、ページごとに明度や色調は変えられないのです。

イラストが雑誌に出るのが早くて2ヵ月後ですが、本の場合はもっと時間がかかります。合間、合間に会の事務所にうかがうたびに、丁寧な経過報告をして頂き、これもとてもありがたいことでした。
そのたびにお二人のご苦労に触れ、お体を心配しておりました。

できあがった本を最初から最後までご覧になって、高野夫人はとても喜んでくださったとのこと。
「国宝級のお宝に筆を入れるような…」かなりヘビーな気分でこのお仕事に臨んでいた高司は、安西さんからの報告に、ほっと胸をなでおろしていました。
「良い図鑑の寿命は10年」と高司はかねがね言っています。10年経って誰も何も反応がない図鑑、というのは誰も本気で使っていない図鑑、なのだそうです。10年経って様々な反応がある図鑑こそが、実際フィールドで使いこまれている図鑑で、これはある程度のサイクルで加筆修正をする必要があるのだそうです。
大きな「手術」が済んで、この大事な一冊「フィールドガイド日本の野鳥」が、今の時代に甦り、また多くの方に受け入れていただければ、お手伝いさせていただいた高司の喜びも大きいと思います。

そういえば、私が一番最初に使い込んだ図鑑も、小学館の「日本の野鳥」で、これも高野さんのご著書でした。それまで手当たり次第に写真や、イラストの図鑑を買っては見たものの、鳥を検索するたびに頭の上に「?????」が生えてばかりで、途方にくれていたのを、この図鑑は救ってくれました。
誰に教わったのか、きちんと種と種の境を線で区切って、その鳥と出会った場所と日時をメモしてありました。それを、25年前にでた「フィールドガイド日本の野鳥」の初版サイン本に書き写す作業は、ことのほか楽しかったことを覚えています。

そんな話を、日本野鳥の会東京支部長の西村眞一さんにしたところ、彼の鼻の穴が全開になりました。「あ、それ教えたの俺」
w(◎。◎)w
大雨の高尾山の探鳥会で自慢げに「日本の野鳥」を見せていたのがまさか西村さんだったとは…何と言ったら良いのやら。
あれから26年。彼は立派な「野鳥図鑑収集家」になり、高司も私も教えてもらうことが多々あります。あ、でも彼は顔文字が理解できません。
さっきの「w(◎。◎)w」もメールであらためて驚きと尊敬を表して送ったところ、速攻で電話があり「なんだぁ?“w”と“(”と“◎”って、意味わかんない!」と言われました。わかれよ!!
あまりに質の良い図鑑ばかり見ていると、想像力が働きにくくなってしまうのかもしれません。どこかで顔文字図鑑、探してこなきゃ。

※「フィールドガイド日本の野鳥」増補改訂版に関しては、(財)日本野鳥の会会誌「野鳥」10月号、11月号に安西英明さんが詳しく書いておられますので、そちらもご覧下さい。

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 11月はこんな鳥を描きます
   15日(木)18時半西荻地域区民センター
          「極コース・タゲリ」
☆11月は楽コースはJBF会場で行ないます

必ず事前にお申し込みください。参加費は1000円です。
レンタルで画材もご用意できます(別途300円)http://www.fieldart.net/drawing.htm

◇過去のオリジナルテキストも頒布中です。1枚450円です。
参加申し込みの際に、ご希望の鳥をお教えください。

◆2008年度も、毎月第二金曜日と第三木曜日の月2回開催を基本として、年間計画を立てています。よろしくお願い致します。


◆丸の内さえずり館 MARUNOUCHI鳥絵塾 
毎月第一水曜日19時、丸の内でお会いしましょう!
お問い合わせ・申し込みは直接丸の内さえずり館へお願いします。
http://www.m-nature.info/about/index.html
  9月以降は「まもりたい鳥を描く」がテーマです。
  11月7日は「トモエガモ」に挑戦します。

◆軽井沢・追分コロニー自然塾 

信濃追分、宿場宿「柳屋旅館」を模し昨年完成した建物で「エコな村の古本屋」としてオープンした追分コロニー。カフェも併設された面白い本屋さんで、年数回、観察会等をさせていただくことになりました。http://www11.plala.or.jp/colony/fm_event.html

 11月3日(土)は15時~ジョウビタキのお絵描き教室を
 11月4日(日)に9時~野鳥観察会を開講します。

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♪♪JBF出展決定♪♪

11月10日()11(日)我孫子・手賀沼湖畔でのジャパンバードフェスティバルにも出展決定しました!!おかげさまで、第一回からの連続出展となります。タマゴ式テキストの掲示や、オリジナル印刷物やテキストの販売、隣接ブースでオオバンやキセキレイのタマゴ式鳥絵塾やアカコッコ・アホウドリの体験ぬりえ塾を開講予定です。「谷口高司&ベクトル 鳥の色いろ工房」でお会いしましょう。

NEW!追加情報
今年も手賀沼親水広場・水の館前での出展です。

NEW!追加情報
両日とも「体験“タマゴ式”鳥絵塾」を隣接ブースで開催!
  10時~オオバン
  12時~キセキレイ
  14時~ジョウビタキ
  参加費各500円要事前申込

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日本野鳥の会東京支部室内例会
「野鳥図鑑を語る」夕べに、谷口高司と西村眞一さんが講演します。
12月11日(火)19時~20時50分
渋谷区立千駄ヶ谷区民会館1階。参加費要。詳細は東京支部へ

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神代植物公園「バードハウス展」谷根千「秋も一箱古本市」
多くのお客様にお運びいただきました。ありがとうございます。

~「着物でハーネス」バックナンバー~
第1羽 「図鑑と私の切ない関係」
第2羽 「きっかけは“ぬくもり”」
第3羽 「雨は好きですか?」
第4羽 「『鳥のぬりえ』夏場所」

第5羽 「旅でであった鳥」
第6羽 「か行の話で、ごめんなさって・・」
第7羽 「善福寺池男2人の物語」
第8羽 「着物でハーネスに至ったわけ」
第9羽 「モノクロ写真に鮮やかな色彩が蘇るとき」
第10羽「カモメとイワシと私のあやしい関係」
第11羽 「冬はやっぱりラ~メンでしょ!」
第12羽 「鳥の絵を描く『谷口高司と野鳥を楽しむ会』」
第13羽 「店閉店で考えた“もったいない”のホントの意味」
第14羽 「今をありのまま受け入れて生きる・・・ことを学んだ三宅島」
第15羽 「古本に魅せられた人たちウォッチングにはまる」
第16羽 「歩いてみました、善福寺川」
第17羽「灼熱の8月に人を偲び鳥を思う」
第18羽「双眼鏡と望遠鏡と」
「着物でハーネス」最新ページへ

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手にとってみれば決して技術を詰め込むようなことはせず、“ぬりやすさ”を第一に考えられていることがお分かりいただけるでしょう。
前編に“鳥を鳥らしくぬるコツ”を丁寧に解説したページや、いきなりぬりはじめるのはちょっと勇気がいるなぁ・・という方の為に“練習用”があったりとまさに至れり尽くせりの内容です。

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谷口高司氏が全ての図版を担当された主な出版物
新・山野の鳥
新・水辺の鳥
“タマゴ式”鳥絵塾

鳥のぬりえ

台湾野鳥図鑑

BIRDS OF KOREA
(韓国野鳥図鑑)

WATERBIRDS OF ASIA(アジア水鳥図鑑)
谷口高司氏オリジナルグッズ
野鳥絵葉書集
第一集
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