第18羽 「双眼鏡と望遠鏡と」

中央高速で東京競馬場の横を通ると、スタンドも目立ちますが、火の見櫓のように建っている走路監視台があたしの目には懐かしく映ります。芝コース・ダートコースの外縁の何箇所かに建つ、四本のシンプルな足の上に小さな小屋がついているだけの、高速道路よりも背高のっぽの小さな建物です。日本中央競馬会に在職中にたった一回だけですが、あのタワーに上ったことがあるのです。 

走路監視台では競馬が公正に行なわれているかを、ベテランの職員が監視します。レース中は斜行や妨害行為がないか、事故馬がいないかのトラブルに目を凝らし、下見所から競走馬が馬場に出てきてからレースを終えて帰るまで馬場全体を見渡す仕事です。競馬会の職員は通常業務と開催業務の二つの仕事をかかえていて、走路監視は競馬に精通した管理職が担当します。当然ある程度の年令がいっている職員が、レースによってはタワーを移動して任につきます。しかも双眼鏡や開催ノートの諸々を持っての移動で、昼食時以外は缶詰状態になります。

緊急に必要なモノがあると連絡を受ければ、「伝令」と呼ばれるアルバイトの子に行ってもらうのですが、ある時どうしても私が行く必要があって、競馬の合間に馬場のへりを歩いて届けにいきました。はたから見るよりかなり急な角度の階段。とてもシンプルな建ち方をしているので、多摩丘陵をみながら、非常階段と同じ向こうが筒抜けの、ハシゴのような階段を途中2回ほど右、左とジグザグ上ります。やっと監視台に辿りついたのですが、怖かったことといったありませんでした。しかもヒールのある靴だったし。 

世の中でキライなものを3つ上げろと言われたら「イカの煮付け」「非常階段」「優柔不断なオトコ」の私にとって、急な非常階段にも等しい走路監視台の階段は正直最悪です。まさに命がけで上ったのですが、競馬の合間ということは他の走路監視台や、スタンド最上階で競馬を監視している裁決室の職員からも丸見えだったらしく「お嬢、スカートであんなとこ登るんじゃない」「何もお前が登らんでも…」とあとから散々言われて、ぐれそうでした。 

ただ生まれて初めて走路監視台でみた競馬場の景色はかなり新鮮でした。ものの見方や角度を変えると見慣れたものもこれだけ違ってみえるというのはかなりの発見でした。その時、走路監視用の双眼鏡を覗かせてもらって、モノが大きく見えることも、またかなり新鮮な感動があることを知りました。

まだバードウォッチングの「バ」の字も知らない「バ」といえば「馬」というくらい鳥には縁遠かった私が初めて、本物の双眼鏡に触った記憶が、走路監視台を見るたびに甦ってきます。走路監視用の双眼鏡は茶色い皮のケースに入っていてなんだか「兵隊さん」っぽいものでした。 

その後しばらくしてカワラヒワのバードカービングからバードウォッチングへ足を踏み入れた私が、後先考えずにまず買ったのが「双眼鏡」でした。双眼鏡といえばこのかたちでしょう、という感じのポロプリズム双眼鏡。●社の「7×35」が私の最初のパートナーとなりました。古い資料をいっぱいお持ちで、中西悟堂研究家でもある西村眞一さんに調べていただいたところによると、当時この双眼鏡は正価で27900円ほどしたそうです。ただ、私の記憶では、まだあやしげな雰囲気がプンプンしている家電量販店のはしりの「ほにゃららカメラ=特に名を秘す」で20000円弱で購入した記憶があります。店員さんの知識もなく、買うにはかなり勇気がいりました。その頃吉成さんのホビーズワールドのようなお店があったら、どんなに心強かったかと思うのですが…。せっかくのMy双眼鏡なのに、仕事仲間からは「そんな安いわけがない、SONYと思って買ったらSOMYだったとか、NIKONNIKKONだったとか、そういう類じゃないの?」とか言われてちょっとびびったのですが、あとで正規品とわかりほっとしたものです
 

双眼鏡で一時は幸せだったものの、やっぱりどうしても望遠鏡も欲しい!と今度は迷わず「ほにゃららカメラ」へ。選択肢のあまりの少なさと、思いがけない「三脚」の出費に動揺。そりゃそうだ、望遠鏡だけじゃどうしようもないもの…三脚の重さ以上に出費の重さに無口になりました。でもこれを背負って歩いていると、なんだか自分がバードウオッチャーとしての階段を一段上がったみたいで、すご~く誇らしいのです。 

望遠鏡も最初は20倍のもので鼻歌交じりだったのが段々高い倍率のものが欲しくなってきます。雪解けの時期のウトナイ湖に初めていく前に、接眼レンズ「20→60倍ズーム」のものを購入しました。ウトナイ湖でデビューを飾った記念すべき接眼レンズなのですが、雪が積もる対岸のオオワシを「どんなかなぁ♪」見たら、あら…20倍に比べたら何と視野の狭いこと、暗いこと、がっかりでした。それでも安い買い物でもないので、いつも鳥観に携帯はしていたのですがどうも反りが悪い。登板率はあまり高くはありませんでした。

まだ肌寒い頃、春の渡りを観に、今は東京港野鳥公園となっている大井の埋立地に行ったときも、結局つけたり外したりで「やっぱ20倍の方が好き」と独り言。まだ整備もされていない時だったので、当然足には枯れ草がひっかりかなり歩きにくい中、汐入の池を後にて、ふとポケットを見るとズームレンズが消えていました。振り向けば藪。見つかる気配のかけらもありません。「……、ま、いいか」。もうあの煩わしいレンズとお付き合いしないでいいと思うと、心底清々しました。

見栄えのいいホストにちょっと貢いで、煩わしくなって、お別れして「高い月謝だったけどいい勉強になりました」みたいな気分って、こんなかしらん?って経験はありませんが。 

肌身離さず持って歩いていた、高野伸二さんのサイン入り初版本「日本の野鳥」には、お友達へあてた私の鳥観スタイルのイラストのコピーが未だにぺたっと貼ってあります。当時の私の鳥観スタイルはL.L.Beanの真っ赤な毛糸の帽子、ベージュのダウンコート、ストームチェイサーというゴム引きの靴。当時は銀座のソニープラザぐらいでしか入手できなくて何回も通いました。リュックは機能性抜群のSIERRA  DESIGNSの迷彩かオレンジ色のどちらか。このブランドは大好きで雨具もここのものを使っていました。そして首にタオルと手に軍手というのが定番でした。何と言うか、ブランド好きはブランド好きでも、ちょっと変わり者のへその曲がった姉ちゃん、みたいな感じですね。そのイラストはかなり誇張して着膨れした状態を描いてあるのですが、四半世紀以上がたって、いまは服を着る前から、そのイラスト以上に膨れた私なっています。

そのイラストにも自慢げに双眼鏡と望遠鏡が描かれています。

ともかくそんな格好で肩に三脚と望遠鏡をかついで、新宿の地下道を歩いていたから「ほぉあなたも鳥を観るのですか?」と川田潤さんにお声をかけていただけたのですね。第10羽にもちらりと書かせていただきましたが、ここで、川田さんにお誘いいただいて、ガセネタを掴ませた高司のことを「谷口さんはそんなに悪い人じゃない」と言われなければ、私と高司の結婚はありえなかったのですから。定期預金を崩して豪雪のウトナイ湖に行ったその日に、上野・不忍池にはじめて「クビワキンクロ」が出たあの年の偶然に、感謝とも悔恨ともつかない気持ちを未だに抱いているのです。 

その後、スコープを●社のものをもう一本買い、高司が所持しているものと合わせるともういいじゃん、という数になり、不自由も不満も感じなかったので、新しいスコープを見てみることもありませんでした。でも、第1回ジャパンバードフェスティバルの「本物でもイラストでもカービングでもいいので、会場にいる鳥を一種でも多くみつけてください」という、記念イベントがあり、めでたく一位になり、一位の賞品としてコーワ社のコンパクトなスコープを頂きました。何故コーワが「◆社」とかの表示じゃないの?と言われそうですが、お高いものを頂いたのでここは太っ腹のコーワに御礼の気持ちをこめて、でございます。

で、このコンパクトなスコープが目からウロコの便利物でした。スコープは重くて当たり前だったのに、何と軽々と持ちやすく、形状も工夫されていることか。大きいものに比べれば、それはもちろん解像度や、明るさは「もう少し感」があるけれど、でもこの気安さはたまらない魅力でした。世の中変わっていたのですね。

この頃コーワから新しく出たプロミナの「20→60」のズームレンズなんて、もう信じられないくらい明るくて観やすいのです。ビックリしました。大井の埋立地でさっさとお別れをした「20→60」とはまさに隔世の感があります。

双眼鏡や望遠鏡って”ほぼ”一生モノと思って買うような気がします。途中、光軸がずれたりカビたりすればメンテナンスに出して大事に使うでしょ?結婚とちょっと似ている?やっぱり慎重に長持ちするもの、メンテナンスができるモノを選びたい。それに加えて自分の年令や目の状況にあわせて、別のものを試してみるのも大事かもしれません。春と秋、バードフェスティバルで、色々と新しいものに出会えるのは、楽しみと同時に、頭を柔らかくしなきゃね、というあたりも沸々と感じられて、良い機会になっています。ちなみに私の双眼鏡、初代はいよいよボロボロになりリタイア、二代目は完全防水の10×42に昇進。それで鳥を観ているのか、というと、もちろん!ではありますが、一番熱心に観ているのは、実はきよしくんのステージです。観劇用にコンパクトな▲社の双眼鏡もあるのですが、「同じ空間に居られるだけでいい」というスタンスで安く手に入れた後方の席だと、あまりこれだと嬉しくないのですね。見えが悪くて。で、重いけれどこの2代目を必ず持って行きます。ステージ全体が見渡せるのでとても幸せ。大きな双眼鏡で見ているお客さんが居るとステージからきよしくんが「野鳥の会の方ですか?」と時たま突っ込んだりするのです。新宿コマ劇場でたまたま12列目に座った時も、この二代目でゴージャスな衣装の生地など見入っていてこのフレーズが来たときは、思いっきりうなずいたのは言うまでもありません。 

少し日々が落ち着いてきたので、そろそろ2代目も正しい使い方をしてあげないとね… 

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谷口高司オリジナルカレンダー2008、作成中です。
お楽しみに!!
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♪谷口高司の額装原画イラスト、店頭で販売開始しました。
♪誠文堂新光社からぬりえの本がでました!

 「色鉛筆でたのしむ大人のぬりえ 日本の鳥」 12種のぬりえと見本。税込み1000円
  もちろんホビーズワールドでも取り扱い中です 

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【野鳥の絵を楽しむ教室:いずれも事前申し込みが必要です】

◆今月の「谷口高司と野鳥を楽しむ会」

描きおろし完全オリジナルテキストを使ってタマゴ式鳥絵塾。
10月はこんな鳥を描きます
  12日(金)18時半アンサンブル荻窪
  「楽コース・年賀状に描きたい鳥:お楽しみに」
   18日(木)18時半アンサンブル荻窪
  「極コース・ツグミ」 

必ず事前にお申し込みください。参加費は1000円です。
レンタルで画材もご用意できます(別途300円)
詳細はこちらへ  http://www.fieldart.net/drawing.html 

◇過去のオリジナルテキストも頒布中です。1枚450円です。
 参加申し込みの際に、ご希望の鳥をお教えください。 

◇年間予定表で8日高尾山とありますが諸般の事情で中止とします。

◆2008年度も、毎月第二金曜日と第三木曜日の月2回開催を基本として、年間計画を立てています。よろしくお願い致します。

◆丸の内さえずり館 MARUNOUCHI鳥絵塾 

毎月第一水曜日19時、丸の内でお会いしましょう!
お問い合わせ・申し込みは直接丸の内さえずり館へお願いします。
http://www.m-nature.info/about/index.html

 9月以降は「まもりたい鳥を描く」がテーマです。
 10月3日は「オナガ」に挑戦します。

◆軽井沢・追分コロニー自然塾 

信濃追分、宿場宿「柳屋旅館」を模し昨年完成した建物で
「エコな村の古本屋」としてオープンした追分コロニー。
カフェも併設された面白い本屋さんで、年数回、観察会等を
させていただくことになりました。 

http://www11.plala.or.jp/colony/fm_event.html

 11月3日(土)は15時~ジョウビタキのお絵描き教室を
 11月4日(日)に9時~野鳥観察会を開講します。

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NEW
♪10月21日(日)は神代植物園に「バードハウス展」に!♪

東京都主催の第37回野鳥の巣箱コンクールの入賞作品展示に
あわせて、私たちもブースを出させていただくことになりました。
秋の薔薇の季節…ぜひお気軽に遊びにいらしてくださいね!http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/tyoujuu/subako/19birdhouse.htm

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♪♪JBF出展決定♪♪

11月10日()11(日)我孫子・手賀沼湖畔での
ジャパンバードフェスティバルにも出展決定しました!!

おかげさまで、第一回からの連続出展となります。
タマゴ式テキストの掲示や、オリジナル印刷物やテキストの販売、
隣接ブースでオオバンやキセキレイのタマゴ式鳥絵塾や
アカコッコ・アホウドリの体験ぬりえ塾を開講予定です。
「谷口高司&ベクトル 鳥の色いろ工房」でお会いしましょう。

NEW追加情報
今年も「手賀沼親水広場・水の館前」での出展です。

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番外!
♪谷根千・秋も一箱古本市に「こちどり」で参加します♪

10月13日(土)谷中・宗善寺で箱をだします。
こちどり姉のタカコと二人着物で参戦しています。
谷中・根津・千駄木の下町散歩のついでに、ぜひぜひ

お立ち寄りくださいね
http://sbs.yanesen.org/hako1/2007aki/shop.html

~「着物でハーネス」バックナンバー~
第1羽 「図鑑と私の切ない関係」
第2羽 「きっかけは“ぬくもり”」
第3羽 「雨は好きですか?」
第4羽 「『鳥のぬりえ』夏場所」

第5羽 「旅でであった鳥」
第6羽 「か行の話で、ごめんなさって・・」
第7羽 「善福寺池男2人の物語」
第8羽 「着物でハーネスに至ったわけ」
第9羽 「モノクロ写真に鮮やかな色彩が蘇るとき」
第10羽「カモメとイワシと私のあやしい関係」
第11羽 「冬はやっぱりラ~メンでしょ!」
第12羽 「鳥の絵を描く『谷口高司と野鳥を楽しむ会』」
第13羽 「店閉店で考えた“もったいない”のホントの意味」
第14羽 「今をありのまま受け入れて生きる・・・ことを学んだ三宅島」
第15羽 「古本に魅せられた人たちウォッチングにはまる」
第16羽 「歩いてみました、善福寺川」
第17羽「灼熱の8月に人を偲び鳥を思う」
「着物でハーネス」最新ページへ

 「色鉛筆で楽しむおとなのぬりえ 日本の鳥」
谷口 高司・著/誠文堂新光社
¥1,000(税込)
着物でハーネスでもお馴染みの「鳥のぬりえ」がついに出版されました!
原画をコンピューター処理するだけのぬりえが多いなか、数々の野鳥図鑑を手がける谷口氏が“ぬるひと”のことを思いながらひとつひとつの線を描いたぬりえです。
手にとってみれば決して技術を詰め込むようなことはせず、“ぬりやすさ”を第一に考えられていることがお分かりいただけるでしょう。
前編に“鳥を鳥らしくぬるコツ”を丁寧に解説したページや、いきなりぬりはじめるのはちょっと勇気がいるなぁ・・という方の為に“練習用”があったりとまさに至れり尽くせりの内容です。

ご自分用としてはもちろん、ギフトにも最適です。幅広い年代の方に喜ばれることでしょう。

ギフト用もご用意
いたしました。
谷口高司氏が全ての図版を担当された主な出版物
新・山野の鳥
新・水辺の鳥
“タマゴ式”鳥絵塾

鳥のぬりえ

台湾野鳥図鑑

BIRDS OF KOREA
(韓国野鳥図鑑)

WATERBIRDS OF ASIA(アジア水鳥図鑑)
谷口高司氏オリジナルグッズ
野鳥絵葉書集
第一集
第二集
フクロウ
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生きてみせる!
シマフクロウ
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Hobby's World店舗には
オンラインではご紹介できない、一点ものの作品も多数ご用意しております。
「谷口高司と野鳥を楽しむ会」
野外で鳥を観察しつつ描くというユニークなスタイルで、初めての方でも楽しく鳥の絵がかけるイラスト教室です。
谷口高司氏から直接指導いただけることはもちろん、いつもパワフルなりつこさんにお会いできるのも楽しみのひとつです。“タマゴ式”鳥絵塾」「鳥のぬりえ」もこの会から生まれました。
 詳しくは 谷口高司 鳥絵工房http://www.fieldart.net/ からどうぞ。