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第15羽 「古本に魅せられた人たちウォッチングにはまる」
ここのところ、私の周りは何故だか「古本」関係の話が盛り沢山。古本といえば、暗ぁくて狭い店内に、びっしり背の焼けたような本が並び、店の奥には苦虫を噛み潰したようなオヤヂ店主と老描がいて、客が一歩店に入った瞬間に、一瞥して客の品定めをする…というイメージを勝手に持ち続けておりました。
そのイメージを引きずったまま、苦手意識を持って過ごしていたので、私の中では古本屋さんに足を踏み入れることは皆無。入った事はないけれど存在だけは知っている、ビデオショップのアダルトコーナーや、銀座並木通りの高級ブランドショップと同じくらい縁遠い存在だったのです。それが、去年辺りからその概念がガラガラと音をたてて崩れつつあるのです。古本というより、古本に魅せられた人々があまりに魅力的で新しい世界の扉が開かれたのですね。
先日は、高田馬場・古書現世に行きました。一間半ほどの入り口に立つと、奥にいる小山のような立派な体躯の店主が、パソコンからはっと顔をあげにっこりウェルカムスマイルで迎えてくれました。セドローくんこと二代目店主の向井透史さんです。今年の谷根千「一箱古本市」で、私たち「こちどり」は、この向井さんから「有無を言わさぬ接客術」でセドロー賞を頂いたのです。
谷根千ってご存知ですか?「谷中」「根津」「千駄木」この3つの下町エリアを結ぶエリアの総称で「やねせん」です。この谷根千で4月29日に「第4回一箱古本市」が開催され、去年4月に引き続き私たちも参加しました。大きさの決められた一つの箱に古本や本に関わるものを持ち寄り、古本屋さんや素人の本好きさんが、谷根千エリアの協力店の前で、1日軒先を借りて本を売る青空イベントです。
この古本市へ参加のきっかけは、15年来の友人Y子ちゃんとの電話でした。彼女は、その頃、村の古本屋として信濃追分・追分コロニーを、そろそろと始動していて、借りるお店ができる前の、最初で最後の参加になるかもしれないから、エントリーしたと言います。下町の谷根千で一日売り手として町に立つのも魅力的だし、同じ大きさの箱に色とりどりの本が詰まって、いろんな店先に並んだところを想像するとワクワクしました。素人でも良いとの事なので速攻でエントリー。
私の着物仲間のタカコさんを誘うと大乗り気で、屋号は「こちどり」にしました。着物の色んなイベントやリサイクルをしようと、タカコさんと決めたときに、いろんな占いで字画の良かった「こちどり」ですが、実際はスタートしておらず、この古本市が思いがけないデビュー・お披露目となったので、着物を着て行くよ!となりました。
気合入りまくりの箱は、タカコさんの会社が休みの土曜日に、会社の倉庫できっちり計って規定の大きさに作り、二人で2時間かけて色紙や千代紙を貼ってお洒落に。もちろん中は着物の本。その時点でamazonの着物本レビューを60本位書いていたので、本の整理も兼ねて、こちらは私が担当。タカコさんは「いろいろあるわよぉ」と持ってきた女の情念本関係を。紙でノボリも作ってコチドリの絵は高司に描かせました。
参加申し込みメールから「こちどり姉妹で~す。着物本関係を中心に参加しま~す♪もちろん着物で伺いま~す♪」と飛ばしまくり。途中年齢をカミングアウトする間もなく、当日を迎え、うら若き姉妹という想像をしていた向きには、たいそう期待を裏切る「妙齢」の姉妹デビューとなりました。この場合の妙は、妙なるの妙ではなく、珍妙・奇妙の「妙」かしら。ま、若目のこまどり姉妹、もしくはこぶとり姉妹ということで…
さて、4月29日当日。朝一番でY子ちゃん夫の運転する追分コロニー号に箱と私たちを積んでもらい、現場に到着。私たちは谷中珈琲店谷中店の軒先をお借りしての出店でした。
ご一緒だったのが、この企画の中心人物、南陀楼綾繁さん。なんだろうあやしげ、と読みます。もちろん芸名。編集者で著述業で古本の世界では超有名人…というふうにおぼろげに聞いていたのに、とってもほのぼのとした、優しい容姿。何だかアザラシのあかちゃんのようです。ただ、彼が持ってきた「箱」は問答無用の大きさ深さ。「なんで企画したあなたの箱は大きいわけ?」と怒りのツッコミを入れると「い、忙しくて~」。お姉さん達の勢いに完全にドン引きの彼。高司に後で話すと「どんなにか怖かったろう…」との感想でしたが、大雨に見舞われたイベントが終わる頃には、私たちは彼を「なんちゃま」と呼び、彼は、どうも容姿が似ているところからか漫才師のお姉さんが二人できたようで、と懐いてくれていました。
このイベントではスタートは幾つかの場所に集まって注意事項の確認のあと、各々の持ち場にで箱を開け、11時にスタート、最後は近所の区立の会場に集結して、売り上げベストテンや各賞の発表があります。各賞はそれこそ古本の世界ならむちゃくちゃ有名な人たち…らしいけれど、私たちはズブの素人なので、表彰式の舞台を眺めつつ、追分コロニーY子ちゃんの解説を聞きながら「ほぉ」「ふぅん」とただただ呆気にとられっぱなし。タカコさんとは「お姉ちゃん、世の中、まだまだ知らないこといっぱいあるんだね…」「ん、ね~~、面白いわねぇ」と小声で話しておりました。
そんな素人妙齢姉妹、「次は谷根千賞!谷中珈琲店で出店のこちどりさんです」と司会のなんちゃまから呼ばれ、慌てたこと慌てたこと。「谷根千」という歴史ある地域のコミュニティ誌の賞を、私たちが頂いたのです。玄人さんがいっぱいいる中で、ありがたいやら申し訳ないやら…。「その箱が誰の箱であるかすぐ分かる」「箱と中身が一致している」ことが選考基準だそうで、私たちの着物にタスキ姿も、力作の箱と高司作成のノボリ同様大いにお褒めいただいたのです。誉められれば誰でも嬉しいでしょ?
それで今年も受付開始と同時にエントリー。もちろん着物&タスキスタイルも、本や箱も昨年を踏襲しました…っていうか新しいのを作っている時間もなかったのですが。
今年はなんちゃまとは離れ離れ。オヨヨ書林さんの前で「退屈男」さんをはじめとする精鋭5箱と一緒でした。一年ぶりで合間にも一回しか伺うことができなかったのに、皆さんがとても良くしてくださって。町のそこここで「あ、こちどりさん!」「元気でしたか?」とお声をかけていただいて勘違いしそうでした。私たちみたいな妙齢姉妹が洋服で参加しても誰一人気付いてくれないだろうけれど、着物ってすごいと改めて痛感。
私たちの今回のミッションは、なんちゃまが企画、奥様の内澤旬子さんがイラストを入れた、売れ残ったら赤字必至の一箱オリジナルエコバッグ「しのばずくんトート」に、1人でも多くの「古本界著名人」のサインを貰うことでした。去年一緒に参加した追分コロニーのY子ちゃんはお店が開店して来られなかったので、「ぜひ!」とリクエストがあったのです。こちどり姉妹の分も含めて全部で5枚のエコバックを抱え、オヨヨに立ち寄られた皆さんから強引にサインをいただきました。
テレビの取材クルーを引き連れていた なんちゃまももちろん逃しません。「愛を込めて♪って入れてよね!」言うと「充分こめてますからぁ」と相変わらずの引き具合。あとでクルーの人たちに「あの人たちは何ですか?」と聞かれ「僕のグルーピーです」としらっと答えていたようですが、ま、それでもいいか。彼は、昨夏私達が荻窪教会通りで出していた「ぬりえカフェ」の前を偶然通りかかったときも、無理やり捕まえて、お話し相手させちゃったし。ともかく好青年、というか、いい人。
そんな中、威風堂々の容姿でオヨヨ書林の前に来て、一際目を引いたセドローさんにも、無理やりサインを頂きました。もちろん彼にも5枚分。それが「有無を言わさぬ接客術」ということで、二年連続で賞をいただくことになるのだから、世の中何が幸いするか分かりませんね~。そこでお店に遊びに寄るね!とお約束して今回の突撃来店となったのです。
セドローさんのお店「古書現世」は私が思い描いていた古本屋さんとは大きく違って、まず、本がお洒落でバラェティに富んでいることにビックリでした。お店も明るい!猫はいたけれど気立てのよい美猫で…。一緒に行った高司は、学生時代を過ごした早稲田の懐かしい店の消息を聞き、セドローさんの著書を買い求めその日のうちに読破し、すっかり彼を気に入ってしましました。セドローさんもその日のことを「一箱のデンジャラスクィーン降臨」とまでご自身のブログで書いてくださって、とても嬉しい再会となりました。メタボ友の会にも誘われたのでメタボクィーンと書かれても不思議なかったのですが。
その何日か前、私たちは信濃追分の「追分コロニー」にいました。村の古本屋から文化を発信したい…ということで年数回、バードウオッチングの会をしましょうか、ということになり、高司、タカコさん、私の3人で、下見を兼ねてお邪魔したのです。タカコさんは荻窪で印刷会社をしていて追分コロニーの印刷物も作っていることから、ぜひ行きたい!となり練馬区の施設で合宿となりました。まだできたてのお店は、家主さんのご先祖「柳屋市兵衛」の大きな木の看板を掲げた、宿場時代の建物を復元したものです。天然木と漆喰の壁のコントラストが美しく、渋い追分宿の建物の中でことのほか目立ちます。
エコでエコノミーな本屋さんを目指しているということで、玄関を入ると、自然ものや文庫だけでなくありとあらゆる分野の本が並んでいます。奥には本を買った方がくつろげるカフェがあり、2階は先々、村の資料館のようにしていく予定で準備をしていました。アメリカで長く暮らしていたY子ちゃんのセンスが、そこここに活かされたインテリアも見事です。
キビタキやキジと出会えた朝のお散歩が終わり、とても心地よい風が吹き抜けるカフェで、Y子ちゃんと、ふわふわいろんな話をまったりしていると、お向かいの堀辰雄記念館に行っていた高司とタカコさんが興奮して戻ってきました。中には入れない書庫の棚を、双眼鏡でのぞいたら、意外なことに、中西悟堂や内田清之助といった鳥の関係の人たちの蔵書が並んでいたというのです。そのほかにも面白い本が並んでいた!と大興奮。それまで、本好きとは思っていたものの、実はタカコさんは、古本好き、書棚好きということがここで改めて判明しました。
古本は、その本を前もっていた人はどんな人だったのだろう…と表紙や、ページの折り目、一本だけ引かれた線などから想像するのがとても楽しいのですって。書棚は、持ち主の主義趣向生き方まで、並んでいる本を見ればわかる!とのこと。だから自分の書棚は誰にも見せたくないんだそうです。下着を見られるよりいやかもしれないって。ふ~む。そういうものですか…
私は生後11ヶ月からずっと喘息もちで、体を動かして遊ぶなんて考えられなかったほど虚弱だったので(本当だってば!)本が唯一のお友達でした。あまりに早く本を読み終えてしまうので、我が家の家計を心配した父が買ったのが「少年少女世界文学全集」。一冊に数話が収録されていて、全部で30冊はあったと思います。嫌いな話は飛ばし読みし、好きな話は何度でもとことん…という小学生らしからぬ読書っぷり。この頃から、ロシア文学は登場人物の名前がダメで、自分の頭はとことん日本語用にできていると痛感していました。実家には成人後に改めて挑戦しようと買った「アンナ・カレー二ナ」が未読のまま棚に残っているほどです。
中学では文芸部に入って、中2では太宰を読破、三島は何様!?って態度が嫌い、という、いやぁな少女でした。理想の男性は、「ジェーン・エア」に出てくるロチェスターっていう渋っぷり。常に本は携帯、結婚するまで1年100冊読破はずっとキープしていたので、30歳目前まで、活字がないと落ち着かないタイプでした。
子ども達が生まれてからは、かなり熱心にこどもの本を集めました。これらの本には幼かった頃の彼らとの思い出がぎゅっと詰まっているので、大事にとってありますが、そのほかの本はずっと取っておきたいというほどの執着心はありません。今、大事なのは?と聞かれたら、ディックフランシスの競馬シリーズと、数冊出ているきよしくんの写真集くらいしか思い浮かびません。
でも、私の周りの本好きさんはどうなのかしら?
まず、高司。3月の店の引越しのとき軽くダンボール50箱の本が出てきたのは驚きでした。ほとんどが「鳥」「虫」「生き物」の本。中には同じモノが数冊あって、若年性アルツだったの?と思わず心配しました。ただ、資料としては古すぎるし、一生開けないよね~というものもいっぱいあって、半分は追分コロニーさんに養子に出しました。
涙目になっていましたが、そのうちどの本を出したのか忘れるほどで、あんまり蔵書が多くても、たいして役にはたたないことがよくわかりました。それでも残り半分の本は、今でも井荻のレンタル倉庫で、お呼びがかかるのを待っています。どうすんだか…
タカコさんは言わずもがな。一箱古本市でも追分コロニーでも、抱えきれないほどの本を仕入れて帰っています。日舞のお名取でもあるので、演芸関係や、戦国時代や江戸時代のいろんな話がお好み。「功名が辻」なんて、タカコさんの解説つきで、大河ドラマが100倍面白くなったほどなのですから、その含蓄もすごいモノがあります。
自称、中西悟堂研究家の西村眞一さんは、中西悟堂の著書を中心に戦前から戦後にかけての蔵書は膨大なものと聞きます。彼のライフワークの一つに中西悟堂の足跡をたどる、という壮大なテーマがあります。中西悟堂は日本野鳥の会の創設者とされ、「野鳥」という造語を生み出した人ということになっています。中西悟堂が野鳥に開眼したのが善福寺池に住んでいた頃だそうで、この善福寺池というのは西村さんの25年来のフィールド。やたら力が入っていて、ホームズさながら、古い本の中のたった一行からヒントを得て謎解きを楽しんでいるのです。
古本だけでなく掲載された雑誌もコレクションしているうえに「自分で見る用」「人に見せる用」「万一の時用」と、同じものを最低3冊は揃えておきたいとのこと。当然、おうちの部屋は本で埋まり、坊やの部屋も侵食されて大変なことになっているのだそうです。彼にとっては貴重な資料でも、坊やにとっては果たして?というところでしょうか。心優しい奥様の、堪忍袋の尾が切れないことを祈るばかりです。その西村さんに「こんな出ものがオークションにでてますよ」と悪魔のような囁きを送り続けるB君も、古本マニアの1人です。
今ではインターネットでいろいろなモノも情報も簡単に手に入ります。それでも「活字文化」を愛する人はちゃんと生息し続け、その人達が多ければ多いほど、伝わる文化の層が厚く豊かになるような気がしてなりません。だって、なんちゃまこと南陀楼綾繁さんや、セドローくんこと向井透史さんは、全然イケメンじゃないけれど、若いのに懐が深くてとっても魅力的、お話していて飽きることがないのです。追分コロニーからは村の起爆剤になりそうなオーラが出ているし、西村眞一さんの悟堂熱は高司をはじめいろんな人に感染しそうだし…古本を巡る人たちの熱いパワーに、圧倒されてばかりなんですもの。
そんなでプチマイブーム「古本を巡る人たちウオッチング」まだまだ楽しく続きそうです。
【今年の一箱古本市の様子】
http://blog.livedoor.jp/tamashigi/archives/2007-04.html#20070429
【去年の一箱古本市の様子】
http://blog.livedoor.jp/tamashigi/archives/2006-04.html#20060429
【追分コロニーに行った時の様子】
http://blog.livedoor.jp/tamashigi/archives/2007-06.html#20070602
http://blog.livedoor.jp/tamashigi/archives/2007-06.html#20070603
【追分コロニー:Y子ちゃんのブログ:otobokecatの日記】
http://d.hatena.ne.jp/otobokecat/
【南陀楼綾繁さんのブログ・ナンダロウあやしげな日々】
http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/200704
【向井透史さんのブログ:古書現世店番日記】
http://d.hatena.ne.jp/sedoro/20070611
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♪谷口高司の額装原画イラスト、店頭で販売開始しました。
♪誠文堂新光社からぬりえの本がでました!
「色鉛筆でたのしむ大人のぬりえ 日本の鳥」
12種のぬりえと見本。税込み1000円
もちろんホビーズワールドでも取り扱い中です
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【野鳥の絵を楽しむ教室:いずれも事前申し込みが必要です】
◆今月の「谷口高司と野鳥を楽しむ会」
描きおろし完全オリジナルテキストを使ってタマゴ式鳥絵塾。
7月はこんな鳥を描きます
13日(金)18時半アンサンブル荻窪
「楽コース・キクイタダキ基本形」
19日(木)18時半アンサンブル荻窪
「極コース・キクイタダキの♂♀を描き分ける」
必ず事前にお申し込みください。参加費は1000円です。
レンタルで画材もご用意できます(別途300円)
詳細はこちらへ http://www.fieldart.net/drawing.htm
◇過去のオリジナルテキストも頒布中です。1枚450円です。
参加申し込みの際に、ご希望の鳥をお教えください。
◆丸の内さえずり館 MARUNOUCHI鳥絵塾
毎月第一水曜日19時、丸の内でお会いしましょう!
お問い合わせ・申し込みは直接丸の内さえずり館へお願いします。
http://www.m-nature.info/about/index.html
8月「ワライカワセミ」です
まだ余裕があるようですのでお問い合わせくださいね。
3月以降は『歌や本でであった鳥』をテーマにタマゴ式だけではなくいろいろな描き方に挑戦します。
◆軽井沢・追分コロニー自然塾
http://www11.plala.or.jp/colony/fm_event.html
8月4日(土)は夕刻ゴジュウカラのお絵描き教室を
8月5日(日)には野鳥観察会を開講します。
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