第1羽 図鑑と私の切ない関係

みなさま、こんにちは。はじめまして。谷口りつこです。

 ただ鳥が好きで観ていたのに、縁あって野鳥図鑑画家と結婚し21年になりました。
日本で一番安い図鑑…でも一番使われている図鑑の「新・山野の鳥」「新・水辺の鳥」の絵を描いるおぢさんが、
私の夫の谷口高司です。高司は私より10歳年上の団塊の世代なので、当然、鳥のお仲間も粒ぞろい?の年上の濃いおじさまばかり。そんな中、貴重な若いお友達・ホビーズ ワールドの吉成さんからの連載のお誘いを、私が断るわけがありません!もちろん笑顔で「よろしくぅ〜♪」とお返事をし、今回のお目見えになりました。

 吉成さんとはフェアのたびに顔をあわせ意気投合。去年は台湾にもご一緒し、隣り合わせのブースで楽しく二日間
過ごしました。鳥インフルエンザを恐れるあまり「バードウオッチングは危険、鳥のいるところに行くな」という政府勧告をモノともしない会場の熱気にも負けずに、マイブームの着物で参加。
バードウオッチャーの命・双眼鏡を、吉成さんのお店で購入したお気に入りのハーネスでずっと首からぶらさげていたのを、彼がとっても面白がってくれたので、連載のタイトルを「着物でハーネス」に決めました。

よろしくどうぞ、ご贔屓に…


 私の主な仕事は「谷口高司」のプロデュースです。仕事の調整はもちろんですが、個展のお話をいただけば
「こんなテーマでこんな展示」と考えかたちにしていったり、懇意にしている印刷会社ベクトルと一緒に新製品を考えたり、お絵描き教室をサポートしたり…という日々を過ごしています。
本が出来る前や、個展開催前などは、徹夜や3時間睡眠の連続ということもしばしば。額装した重い額を持って行き来しながら「何か前世でやったのかぁ?」と、ふと思ったりすることも。
私の前世はわかりませんが、ただ1つ心当たりがあるとすれば、高司の鳥の先生、高野伸二さんのご苦労を、若き日の私が理解していなかったから?というあたりでしょうか。

 まだピチピチだった頃の私は、ともかく鳥が大好きで、日本中央競馬会の勤務の合間に、お給料の大半を注ぎ込んで、北へ南へ鳥観に励んでいました。その頃の私の不満はオトコでもシゴトでなく「まともな野鳥図鑑がないこと」。
当時、写真の図鑑は一長一短、絵の図鑑も古臭いのばかり…そんな中、日本野鳥の会で画期的な図鑑を出すと知り
大興奮。何回かの問い合わせの後、やっと発売日が判明し、その日は勇んで当時246沿いの青山・第一園芸ビルに
あった本部に行きました。
エレベーターフロアで待ち、開店と同時に一番で入った私は、目の前に積まれた「フィールドガイド・日本の野鳥」を
みつけ、迷わず1冊手に取りレジに行きました。すると後ろのほうで「買っていく人は、中も見ないでサッて買っていくんだなぁ」という声がしたのです。誰?このおじさん…と思いつつも、確認する事もなく帰路へ。
後日、そのぼやいてらしたのが高野さん本人と知った時の驚きといったら!いくら素人でも、図鑑を作るのは大変だろうなぁ…という想像くらいつきます。「楽しみにしていました!」のご挨拶ぐらい何故言えなかったのか…穴があったら入りたい、穴がなかったら掘ってでも入りたいほど、申し訳なさでいっぱいになりました。

 高司は、多くの国の図鑑も描かせて頂いていますが、本当にこの仕事は忍耐力が必要と思います。
自分だけが納得する絵を描くだけでは良い図鑑にはなりません。現地の学者・識者・レンジャーなど、最前線で野鳥を観察し、保護している人たちの見解をすべて盛り込むことで、役に立つ王道の図鑑が出来上がるのです。
もちろん描き手は加筆修正の繰り返しの作業となります。自己否定の繰り返しともいえるこの作業を延々と重ね、やっと一冊の図鑑ができる、しかも高野さんはテキストまで担当されています。渾身の一作「日本の野鳥」の「いの一番」のお客である私が、サイン本ということも確認もせず、まるでパンでも買うかのようにレジに並んだら、それはさぞかし、がっかりされたことでしょう。

 「野鳥の世界の長嶋茂雄」のような存在…敬愛してやまない高野さんを、高司はよくこう例えます。
鳥への並外れた知識と、識別眼をもちながらも「先生」と呼ばれることを嫌い、フィールドでアオアシシギの声を真似してはバードウオッチャーを振り返らせるようなウイットを持ち、決して威張らず、若い人にも気軽に声をかける…相撲も得意で強かったとのこと。高野さんと触れ合った喜びを、多くのバードウオッチャーが今も大切な思い出として持ち、それが励みとなって、没後21年を過ぎてもなお、各々が鳥の世界で活躍していることが、何より素晴らしいことと思います。

絵や写真を専門に学ばれたわけではないのに、何冊も素晴らしい図鑑を残された高野さん。クモが大好きでクモの研究でも大きな足跡を残された高野さん…高司にとっては永遠の師なのです。

仲人をお願いした高野さんが病に倒れ、60歳の若さで亡くなられたのが、ちょうど私達の結婚式の真只中でした。

その報に触れ、高司は、生前の高野さんとの約束を守るべく、野鳥図鑑の仕事をライフワークに定めました。
そして、私がそれを支えると決心してから同じだけの月日が過ぎました。
手が震えるといけないので筆より重いものは持たせず、不得手な交渉ごとにも矢面にたたせず…結果息子達以上に手がかかる、おぢさんになってしまいました。が、おかげさまで多くの方の支えを頂き、高司の夢はかたちになりつつあります。
もっと大きな夢が叶うよう、あのときの高野さんへのお詫びの気持ち胸に、私も日々がんばろうと思うのです。




ハーネス:首にかけず襷のように双眼鏡をぶら下げることが出来る。
 首の凝りとは無縁になる画期的な観察サポート用具。

「新・山野の鳥」「新・水辺の鳥」日本野鳥の会のロングセラー図鑑。
 前作の「山野の鳥」「水辺の鳥」を含めると100万部を越える入門書に最適な一組。


「日本の野鳥」日本の野鳥図鑑のスタンダード。

☆谷口高司の海外図鑑「台湾野鳥図鑑」「アジア水鳥図鑑」「原色野外図鑑・韓国の鳥」近刊「モンゴル野鳥図鑑」

〜「着物でハーネス」最新ページへ〜

谷口高司氏が全ての図版を担当された主な出版物
新・山野の鳥
新・水辺の鳥
“タマゴ式”鳥絵塾

鳥のぬりえ

台湾野鳥図鑑

BIRDS OF KOREA
(韓国野鳥図鑑)

WATERBIRDS OF ASIA(アジア水鳥図鑑)
谷口高司氏オリジナルグッズ
野鳥絵葉書集
第一集
第二集
フクロウ
面々シール

生きてみせる!
シマフクロウ
ポスター
Hobby's World店舗には
オンラインではご紹介できない、一点ものの作品も多数ご用意しております。
「谷口高司と野鳥を楽しむ会」
野外で鳥を観察しつつ描くというユニークなスタイルで、初めての方でも楽しく鳥の絵がかけるイラスト教室です。
谷口高司氏から直接指導いただけることはもちろん、いつもパワフルなりつこさんにお会いできるのも楽しみのひとつです。“タマゴ式”鳥絵塾」「鳥のぬりえ」もこの会から生まれました。
 詳しくは 谷口高司 鳥絵工房http://www.fieldart.net/ からどうぞ。
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