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野鳥あれこれ
百瀬 淳子さんプロフィール
東京都在住
1966〜68年、1988〜89年 フィンランドに滞在。
日本野鳥の会会員、北欧文化協会理事
著書: 『白夜の国の野鳥たち−フィンランドを歩いた日々』 同成社
『アビ鳥(どり)と人の文化誌−失われた共生』 信山社

「野鳥あれこれ」 第3話 (豊かな海鳥の海 玄界灘               百瀬 淳子

2006年4月9日(日)、日本野鳥の会福岡支部の玄界灘海鳥船上調査に参加させて頂きました。玄界灘は朝鮮半島から九州、沖縄への渡りのルートおよびカムチャツカ半島から本州、東南アジアへのルートの交わる点にあり、春先多くの海鳥が集まります。

福岡支部は2002年、5ヵ年計画の「玄界灘海鳥調査藩」というプロジェクトを立ち上げました(藩としたのがユニーク)。陸からと定期航路からの観測の他、年に一回、春に小型船をチャーターして海上から鳥の観察と数を数え、分布及び生態を調べます。今年は5年目にあたり、船上調査も4回目を迎えました。

さてその日、朝早く福岡市内から田村耕作さんの車で集合場所志賀島に向かいました。春の客黄砂が到来、市街は薄茶っぽくかすんでいます。集合場所に着くと、皆さん早々とお見えになっており総勢13名になりました。

9時45分、全員黄色い救命具を着用して出航、それぞれ船のへさきと中央と後方に座りました。へさきに陣取ったのは、望遠カメラを構えた写真係りの山本勝さんと小さなカメラを持った私。カウント計を持った田村さんも、へさきで海を漂うビニール袋やプラスチックのゴミを数えることになっています。

海は少し波がたっています。天候は曇りで午後には雨があるかもしれないという予報、海上はぼんやりともやって視界は良好とはいえません。しかしその中で、鳥はすぐにあらわれました。まずウミアイサ40羽、カンムリカイツブリ8羽、ハジロカイツブリ1羽。

博多湾の中にある能古島(のこのしま)が左手に見えます。ウミスズメが飛び、少し離れた沖ノ島に繁殖地のあるオオミズナギドリがたくさん飛びかいます。そして水中にはクラゲが多数見えます。

30分たった頃、セグロカモメとアビ類の混群があらわれました。5,60羽が大きく広がって浮いています。アビ類はほとんどがシロエリオオハムです。それを双眼鏡で眺める間もなく、また次のアビ類の群れが3,40羽、定置網が仕掛けてある側で、ここにはいつも鳥が集まります。

左に玄界島、右に志賀島、正面に相島が見える場所に来ました。オオミズナギドリとアビ類との混群が浮かんでいます。シロエリオオハムはもう飛びはじめた個体も2,3おりました。夏羽に変わりかけたものもいて、きれいな背中を見せてくれます。

昨年の4月、私は相島に渡り、陸地からシロエリオオハム100羽近くの群れをじっくり観察しましたが、頭が白っぽいグレーに光って背中はチェック模様が浮き出しもあれば、まだらの頭もいる。いまだ背中ともども黒褐色でしっかり冬羽のもいる。まだあご紐のあるのもいる。前頸に黒い縦線が見え出した個体もありで、この時期それぞれに羽の色、模様が違っていて面白いものでした。

柱島に来ました。この小さな島はウミウのフンで真っ白に覆われています。ヒメウが2羽飛んでいきました。

大机島、小机島が並んでいます。ここにはウチヤマセンニュウがいるとのこと。
また近くの玄界島にはカラスバトがいるそうです。

田村さんが海上を漂う何かを見つけ、すくいあげました。オオミズナギドリの死骸で羽が折れており、死後それほど経っていないものでした。

藩長の栗原幸則さんは、カウント計を持って数を調べています。

「今度は大群ですね」

500羽のアビ類の群れ、長く黒い帯のように一筋の線をなしています。遠くなのですが、よく見るとその中で円を作っているようにも見えます。かつて瀬戸内海でアビ漁が行われていたとき、鳥たちは小魚の群れを丸く囲み、協力して捕食していたのです。その側で漁民はタイを釣り上げたのでしたが、それを見たような気がしました。

特筆したいのはウミスズメがとても多く見られること。数羽の群れ、最大は25羽の群れ。その他カンムリウミスズメも飛びます。ウミスズメ類にもアビ類にも、舞うオオミズナギドリについても言えることですが、羽の模様などが近くでよく観察できます。北海道への航路でも海鳥はよく見えますが、何といっても遠い。その点ここでは近くで、同じ目の高さで、船も停まってくれるので、観察するにも写真撮るにも絶好です。

相島の南東に来ました。またアビ類の大群が2群、ふーっとあらわれてきます。海上では換羽した羽が次々に流れてきて、皆で躍起になって網ですくおうとするのですが、思うようにはいきません。

前方に、海の中道が長く続いています。海の中道の先端にある志賀島は昨年3月の福岡西方沖地震で回遊道路が切断され、今もなお全復旧とはなってないようです。この島は有名な「漢委奴国王」金印が出土した地で、発見場所は金印公園となっています。

岸寄りに数十羽のアビ類の群れがいくつか。次々に群れはあらわれ、とにかく圧倒されるほどの数です。福岡支部ではアビ類を玄界灘の典型種にしています。

予報ははずれて薄日も差し、海もべた凪ぎになって海鳥をカウントするには良い天候の一日でした。5時間の航海の間、ビニール浮遊物は181個カウントされました。これを海の生きものたちが食べ物と間違えて飲み込めば、命を失うでしょう。この数字は支部報に掲載されるものです。

今回、多くの海鳥を観察できたことに感謝いたします。

観察された鳥を以下に記します。(2006.4.23)

 

記録された種 18種  総羽数 6.186羽 

確認種
・アビ(1)・オオハム(13)・シロエリオオハム(928)・アビsp.(2751)・ハジロカイツブリ(11)
・カンムリカイツブリ(8)・オオミズナギドリ(1219)・ウミウ(452)・ヒメウ(49)・アオサギ(5)
・カルガモ(6)・シノリガモ(10)・ウミアイサ(543)・ユリカモメ(1)・セグロカモメ(18)
・オオセグロカモメ(92)・ウミネコ(10)・ウミスズメ(44)・カンムリウミスズメ(4)
・ウミスズメsp.(22)


 野鳥あれこれ バックナンバー
 ○連載第1話「ツグミとシロハラ」
 ○連載第2話「ビオトープの庭20年」
百瀬さん著書 〜書籍のご案内〜
白夜の国の野鳥たち
-フィンランドを歩いた日々-

¥1,835
同成社/220ページ/20cm×14cm
1990年9月発行
北欧の野鳥や、自然、人間をみずみずしく描いた探訪記。
アビ鳥と人の文化誌
-失われた共生-

¥2,039
信山社/220ページ/22×16cm
1995年8月発行
そう遠くない昔、アビと人々の生活は密接に関わりを持っていたのです。
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