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野鳥あれこれ
百瀬 淳子さんプロフィール
東京都在住
1966〜68年、1988〜89年 フィンランドに滞在。
日本野鳥の会会員、北欧文化協会理事
著書: 『白夜の国の野鳥たち−フィンランドを歩いた日々』 同成社
『アビ鳥(どり)と人の文化誌−失われた共生』 信山社

野鳥あれこれ 第1話  (ツグミとシロハラ)              東京支部  百瀬淳子

このたびホビーズワールドのメルマガに、連載を載せないかとの依頼をうけました。何か思いつくままの野鳥雑感みたいなものを、書いてみようかと思っています。

今日、我が家の庭のピラカンサの木にシロハラが来ました。まったく久しぶりのことで、私は大喜びしました。シロハラといえば、もう30年前くらいになりましょうか、一羽が毎冬やってきて、いつも木の中ほどにひっそり止まっていました。そのころは野鳥に関心が無かったので、別に何とも思いませんでした。そのうちいつしか姿を見なくなりましたが、その頃から私のほうは野鳥に関心を持ち出したのですから、すれ違いです。

ツグミは毎年、来ました。亡くなった義父がツグミ大好きで、見る度に「淳ちゃん ツグミが来たよ 見てごらん」と大騒ぎするので、私もしぜんにフアンになりました。

 初冬のある朝、ふと気がつくと、ツグミが来ています。高い塀の上でじっと空を見上げています。何を考えているのか、私は少女の頃口ずさんだ詩を思いだします。「山のあなたの空遠く 幸い住むと人のいう」 冬の到来を告げるひんやりとした空気、それとともに遠い北の国から渡ってきた鳥はどこか哀愁を漂わしています。

また孤独の鳥です。一族郎党をひきつれたヒヨドリが騒ぐかたわらで、恋人も友も連れずひとり静かに「カッ カッ」と鳴きます。そして餌台の下で、ヒヨドリが食べ散らしたパンくずをつつましやかに拾って満足しています。何といじらしい鳥でしょう。

そして何よりも私が保護者的気分にさせられるのは、イジメられっ子だからです。ヒヨドリがいない隙をみはからって、やっとの思いで餌台にのりました。ところがヒヨドリはどこかで見張っているのです。満腹しているにもかかわらず急降下し、ツグミはぶざまに地面に転がされます。何と意地悪な鳥でしょう。「コラーッ」 私はガラス戸をたたいて抗議し、わがツグミの不甲斐なさに涙します。

ところがある日のこと、例によって餌台にいたツグミにヒヨドリが急襲をかけました。当然いつものように逃げるツグミを想像していた私は、次の瞬間わが目を疑いました。ツグミは食べかけのパン片をくわえたまま、ヒヨドリを餌台の端に追いつめ追い出したのです。また別のヒヨドリが襲ってきましたが、これも口をあけ威嚇して追い出し、なんと7,8羽を撃退して餌台を守りました。「エーッ あれがツグミか」 思いがけない光景が信じられませんでした。

それからというもの毎日ツグミは餌台に陣取り、迫ってくるヒヨドリに応戦して「バッシ バッシ」と追い払っていました。あの弱いツグミがなぜかくも強く変身したのか、その謎は数日後に判明しました。餌台にいたツグミが襲われ追い払われました。襲ったのはツグミです。つまり餌台のツグミは2羽が演じていたのです。ある日強いツグミがやってきて、いままでの弱いツグミにとって替わっていたのでした。

弱い同胞の中で、ひとり万丈の気をはいた強いツグミ。彼は10日ほどしていなくなりました。その後はまた前のツグミが復活して、相変わらずヒヨドリにいじめられる毎日が戻ってきました。この話は20年も前のことです。

 

毎年ツグミは来ますが、だんだん来る時期が遅くなり、数も少なくなってきました。去年も今年も一羽です。そしてシロハラを目にすることは、ほとんどありません。

10年くらい前ですが、シロハラのオスとアカハラがしばらくやってきた年があり豪華版でした。色の濃いシロハラのオスは、元気よく強そうな感じでした。でも私には大昔、いつもひっそりと木の陰にいたメスのやさしげな姿が心に残っているのです。その頃の庭には水場もなく、餌台も設置されておらず、実のなる木もほとんどありませんでした。それなのになぜいつも来ていたのでしょう。

今日来たシロハラのメスは明日も来るでしょうか。残念ながら赤いピラカンサの実は、もう僅かです。 (2006.2.20 )    

    


百瀬さん著書 〜書籍のご案内〜
白夜の国の野鳥たち
-フィンランドを歩いた日々-

¥1,835
同成社/220ページ/20cm×14cm
1990年9月発行
北欧の野鳥や、自然、人間をみずみずしく描いた探訪記。
アビ鳥と人の文化誌
-失われた共生-

¥2,039
信山社/220ページ/22×16cm
1995年8月発行
そう遠くない昔、アビと人々の生活は密接に関わりを持っていたのです。
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